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2020年に開催された平塚KEIRINグランプリで見事王者に輝いた和田健太郎。
今年、グランプリが同じ平塚で行われるにあたり、新人記者の私と和田で対談の場を設けてもらった。
ここではグランプリ出場が決まる前から獲得した後までの流れを質問形式で順を追っていこうと思う。
――グランプリ出場を決めたのは、和歌山で行われた高松宮記念杯の決勝2着が大きかったですよね?
和田「そう。あの2着は大きかった。終わったあと、みんなに『行けんじゃね!?』って言われて。2020年はコロナ渦ということで一番賞金のデカいダービーがなくなったり特殊な一年。ダービーが普通に開催されていたらどうなっていたか分からなかった」。
――グランプリに乗れそうかなというのはどれくらいから視野に入っていましたか?
和田「2020年も落車は相変わらず、年間通してしていたけど、これは毎年のことだからね。その前の年くらいから賞金でいいところにいられて、確か親王杯(2019年)でも決勝に乗って。それで確信を持ったのは(2020年の)最後の競輪祭。準決勝で郡司(浩平)君とワンツーが決まって、それで確定的というか、ほぼほぼ大丈夫じゃないかなと。郡司君はもう決まっていて権利を持っていたんだけど、後ろに付く俺のことを考えて走ってくれた。結果は抜けなかったけど、近年のベストレースを上げるとすればアレになるんじゃないかな」。
――確か、グランプリ前の松戸記念を走られていましたよね? グランプリを確定した選手は直前には走らない方が多いですが…。
和田「正直、悩みました。日程はちょうど今回の松戸と同じだったから、怪我できないリスクもある。少なからず緊張はありました。行く前に岩本(俊介)に電話して『行っても大丈夫かな…?』って。そしたら岩本が『自分がサポートします』って言ってくれたので参加に踏み切った感じです。ただ、4日間通して前を抜けず。決勝は岩本君マークで2着がいっぱいだった(苦笑)」。
――そこからグランプリ本番となるわけですが、緊張はありましたか?
和田「緊張はそんなに。乗れたのは運が良かっただけなので。僕以外の他8人は乗るべくして乗って、松浦君とか郡司君とか平原君は獲るか獲らないかのところにいたけど、僕は引っかかるか引っかからないかで偶然引っかかっちゃった感じだから。こんなメンバーで走れるんだ、すげーなーって、完全にお客さん目線でした(笑)」。
――グランプリを獲りたいという気持ちは?
和田「初出場で獲る? あるわけないでしょうって感じだったし、とにかく自分はミスらないようにとそれだけ。グランプリは普段と違って7周だから、まずは周回を間違えないように。間違えて動いたり、突っ込んだりしたら恥ずかしいから、1周1周心の中で数えていた(笑)。ほんと半分くらいお客さんの感覚でしたね」。
――その辺りの緊張もあったわけですが、実際のレースはどうでしたか?
和田「レースは大体あんな感じになるのかなと。脇本もいつもの感じだと思ったし、郡司が行って、松浦が行って止まって、その後に清水が行って平原と絡む。ちょうどそこで空間ができて突っ込んだ感じ。完全に運だけ。だって普通あんなに空かないよ!? 人が5、6人入れるくらいのスペースだったし、俺じゃなくて他の人でも獲れたと思う。最後はもう空いたー!って、超ショートカット。自分でこじ開けた訳ではないし、モーゼの十戒みたいな感じでしたね」。
――がっつり脇本選手を抜いての1着。獲った瞬間はどうでしたか?
和田「ゴールしてから一番に思ったのは、これはドッキリなんじゃないかと。もちろんドッキリなわけないし、これが現実だっていうのも分かっていたけど、実はプレグランプリでした、本番じゃないですって言われるような気がして…。あれは今思い出しても本当に夢のようでしたね」。
――ゴールした後に郡司選手と肩を抱き合っていた姿は印象的でした。
和田「郡司が行ってくれたからこそ、獲れたものですからね」。
――グランプリを獲った後、けっこう悩まされる時期でもあったのかなと思いますが。
和田「いやぁ、スタート取るのがマジでキツかった(グランプリを獲った選手は翌年1年ずっと1番車のユニフォーム)。肩鎖関節を痛めていたし、取ってくださいって頼まれても取れないことが多くて…。ラインのみんなに悪いことしました。終わってから、スタート失敗したでしょ!?って言われることもけっこうありましたね(苦笑)」。
――SSとしての責任感は?
「それは、全く。そういうのを感じる間もなかったね。年が変わっても怪我ばっかりしていたので。落車も5回くらいかな。普通の人に例えると交通事故5回。やばいでしょ!? それで、そういうときによく例に出すんだけど、平原はやっぱりすごいなって。落車しても普通に戻ってくるし普通に走っている。今思えば俺にはその覚悟というか気合が足りなかった。一過性のモノでしかなかったかなって。今までずっと何かあれば怪我を言い訳にしてきたけど、それは言い訳にはならないなって思いました」。
――今後、またグランプリにという気持ちは?
和田「もちろん、選手をやっている以上は目指したい。ただ、今の状態でグランプリどうこうとは言えないね。今はSSじゃないし、みんなと同じ普通のS級。自分の状態がフラットないしそれ以上になるのが大前提で、獲る・獲らないはその先の話。グランプリを獲った時の状態を10割とするなら今は7、8割くらい。痛めた肩鎖関節は一生モノだし、今後も上手にお付き合いしていくしかないね」。
グランプリ当時の事を聞いていたわけだが、最後はなぜだか私の話題になってしまった。
和田「宮本の印象? 普通(笑)。何にも染まってない感じ。珍しいよね。記者の人ってみんな癖のある人が多いのに。だから逆に目立つ。なんかちっちゃいのがウロウロしているなぁって(大爆笑)」。
――えー…それでは最後に来年の抱負とかを聞いてもいいですかね?
和田「来年の抱負? 宮本の面白さをもっと引き出す。以上!」。
としっかりオチまで付けてくれる大サービス。最初は話しかけるのも緊張したと伝えると、「俺なんかで緊張してどうすんのよ。俺を踏み台にしてくれ」とサービス精神旺盛で寛大な和田のお陰で終始和やかな対談となった。
和田の次走は12月28日からの平塚グランプリシリーズ。2年前の思い出を胸に、今年最後のレースで一年を締め括る。