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8月6日(土)、7日(日)にかけてTIPSTAR DOMEで行われた
「第8回JICF国際トラックカップ/全日本学生選手権オムニアム大会」。
男子スプリントで優勝した次世代のホープ・太田海也(121期・岡山)選手に話を聞いた。
――先日のジャパントラックカップ(伊豆)で国際大会初優勝。今大会、自信や手応えはありましたか?
太田:全くなかったですし、予選のハロンタイムも悪くて。自分自身でも「このくらいのレベルなのかな」と思ったり…。でも、対相手のレースになると気持ち的にも凄く湧き上がる。千葉250バンクはちょっと変わった形状なので、慣れるまでに時間がかかったけど、なんかこう…楽しむことはできたかな、と。あまりプレッシャーも感じずに走れましたね。
――やはり、伊豆ベロドロームと感触に違いはありますか?
太田:全然違いますね。多分、ここ(TIPSTAR DOME)はクセが多くあるほうのバンク。「攻略するのに少し時間がかかりそう」と、周りとも話していました。イメージとしては、伊豆が“円”だとしたら、千葉はデコボコしている感じ。コーナーに入る前に沈んで、コーナーに入って上がる。そこを巧く掴めるとスピードが出るのかな、と感じました。ハロンタイム自体がめちゃくちゃ弱いので、練習する必要がありますね。
――以前は「競技経験がないことが強み」と話していましたが、競技歴はどのくらいですか?
太田:競技を始めて7カ月くらい?ですかね。でも、スプリントやケイリンを本格的に走ったのは実はジャパントラックカップが初めてで…。運が向きました。ジャパントラックカップは4日間開催されて、最後の1日だけ結果が出ただけ。なので、総合的に強い訳ではないんです。今回のスプリントも最後は力で押さえ込んだだけですし、まだまだこれからテクニックを身につけていかないといけません。
――刺激や影響を受けている人はいますか?
太田:自分は何でも吸収して、影響を受けやすいタイプ。キュッと聞いて、キュッと受け止めて。流れるようにというか…、そう書いとってください(笑)。チームスプリントで1走目を務めている長迫吉拓(※)さんですかね。練習に対しての心構えが凄く、尊敬しています。
※自転車競技BMXレースのリオ、東京五輪男子代表。長年、日本のBMXレース界をけん引してきた。また、トラック競技においても男子チームスプリントで国際大会に出場。自転車競技界の二刀流として活躍していたが、東京五輪後にトラック競技への転向を明言。
――どういった点が凄いのでしょうか?
太田:練習場へ絶対にスリッパで来たりしないところとか。本当に細かいところから、プロ意識を持ってやっている。練習への意識も凄いんですよ。ずっと伊豆で一緒に練習をしていますが、一緒に走っているからこそ尊敬していますし、長迫さんの背を追いかけています。
――普段から練習を共にする選手との対戦は、やっぱり意識しますか?
太田:自分は対戦形式で練習をしたことが全くなく、経験がなくて。いつも先輩たちの対戦練習を見ながら「速いなぁ~」と客観的に眺めていただけ(笑)。なので、こうやって大会で対戦したり、表彰台の真ん中に立たせてもらって左右には先輩方がいて…凄く違和感がありますね。
――表彰式では満面の笑みでしたね。(写真:左から2位小原佑太、優勝 太田海也、3位寺崎浩平)
太田:いや、あれは後ろで…お二人に背中をつねられていて(笑)。しかも結構、強めに。「チクショウ~」って(笑)。雰囲気の良いなかで、皆、バチバチに戦っています。
――本格的に大会に参加し、スプリントでは連続優勝。今後に向けても弾みが付きそうですね。
太田:良くも悪くも、みんなが期待してくれるようになるというか、ライバルたちが自分のことを意識してくれるようにはなったのかな、と。警戒されるからこそできる戦いもあると思うので、そんな中で自分の強さを発揮していけたらと思います。
――そんな上昇一途の太田選手の原動力って何でしょう?
太田:今は…自分の成長であったり、憧れている方々に少しずつ近づいているのを実感できる瞬間ですかね。凄く刺激的で楽しく感じています。
――ボート競技を辞めて大学を中退、社会人経験など様々な経験をされていますよね。
太田:経験と言えるほど経験はしていませんが、真っ直ぐとはいかない人生ですね。紆余曲折しながら、悩みながらの人生です。でも、自分の中では悩んで、それを超えていくのも人生の楽しさなのかな、と。寄り道を沢山したほうが色々な経験ができますしね。
――ひとつひとつのハードルを越えていく、といった感じでしょうか?
太田:はい。そういったことが自分でも好きなんだと思います。心が折れそうになった時もあるけど、折れない。元々は凄くメンタルが弱く、1年前の自分だったら「折れているな」と感じることがよくありますが、段々と少しずつ強くなっていった実感はあります。
――では、最後に自転車競技の魅力を教えてください!
太田:競技の魅力は…まだ僕も分かっていないです(笑)。
――たしかに、競技を初めて1年も経っていないですもんね。これからですね!
太田:まだまだ模索中ってことにしておいてください!
――今、楽しいですか?
太田:楽しいです!自転車競技は自分自身と向き合える競技。人と戦うというよりも、自分自身との戦いがの日々があってこその対戦だと思うので。そこが自分の中では自転車競技の魅力なのかな、って感じています。
東京五輪を終え、長年、ナショナルチームをけん引してきた脇本雄太や新田祐大、深谷知広、河端朋之、雨谷一樹が代表を引退。それでも太田海也や中野慎詞といった次世代の芽が出始めているのは確かだ。特に、太田は競技経験が浅く、そのポテンシャルは計り知れない。インタビューを通じて、太田自身も未知なる自分の可能性に期待し、日々の挑戦を楽しんでいるかのように感じられた。
競輪選手養成所を早期卒業したスーパールーキー。今後、競輪との両立をはじめ、立ちはだかる壁は多いかもしれない。紆余曲折の人生を歩んできた太田には、その壁をどんどん超えていけるだけの人間力が備わっていると感じるし、ひとつひとつステップアップしていってほしい。偉大な先輩たちから受け継いだバトンを握りしめ、パリ五輪を目指す太田から目が離せない。