特別インタビュー

KEIRINグランプリ2023 開催直前!脇本雄太・古性優作 スペシャル対談

2023/12/16

『KEIRINグランプリ2023』に出場する脇本雄太選手、古性優作選手。岸和田競輪場で行われた直前合宿に参加する二人を直撃。今年の総括や大一番に向けての意気込みを語った。また、近畿地区のこれからや強さの定義についても言及。輪界最速の脇本、輪界最強の古性の近畿ゴールデンコンビが本音でガチトークを展開!

寂しくなる自分がいる、脇本さんが強すぎて(古性)

 

――まずは今年を振り返っていただきましょう。全日本選抜、高松宮記念杯、寬仁親王牌、年間3度のG1を制した古性選手からお願いします。

 

古性 脇本さんに支えていただき、近畿の先輩や後輩、家族、お客さんのおかげで安定した成績を残すことができたかな、と思います。

 

――脇本選手はいかがでしょうか。

 

脇本 今年は特に古性君との連係も多かった。本来であればワンツーを決められたら一番良かったんですけど、その中でも「ラインでしっかり優勝者を出す」っていうことに関しては今年はできたのかな、と。ただ、後半戦で僕は怪我で悩んだ時期もあったので、全体的に見れば苦労した一年でしたね。

 

――お互いに印象に残っているレースを教えてください。

 

古性 脇本さんとは毎回、走る度に力の違いを凄く感じた。走る度に本当にこう…、比べる存在がいないぐらい脇本さんが強すぎる。その現実に寂しくなる自分もいますし、脇本さんが強すぎて(笑い)。

 

脇本 (笑い)。

 

古性 でも、その現実を知ったからには、やっぱりそこの域を目指したいという気持ちもある。そういう面では脇本さんは、自分を満足せずにいさせてくれる存在だなと思うので、これ!といったレースっていうよりは、もう連係したレース全部に凄み、レベルの違いを感じた。本当に競輪界最強だな、と。どういう結果であれ、いつも「すげーな」と思っていますね。

 

――個人的に印象に残っているのが、平塚ダービー・準決勝で脇本選手が逃げ切ってワンツー。走り終えた古性選手が脇本選手の強さに思わず「ショック」というコメントを残していましたね。

 

古性 あれはもう、何ですかね。タイム的にもハイラップで、その後ろに付かせてもらったのは光栄だとは思うんですけど…。何をやっても、そこにたどり着くイメージは全く湧かなかったですね、あのレースは(笑い)。

他の選手も手も足も出なかったし、他の選手も凄い壁を感じたと思います。だからこそ、決勝戦は大変なことになったとは思うんですけど(笑い)。

でもやっぱり、脇本さんはそうやって強さを見せてきたからこそ、周りは脇本さんに追い付こうと努力をしてきたと思う。結局、脇本さんを中心に競輪界は回っているなとは思いますね。

 

脇本 変な注目が多いんだよね。

 

――変な、とは?

 

脇本 普段の選手だったらこうならないのに、俺と連係した時はこうなるんだっていう。浅井(康太)さんが千切れたり。

 

――「絶対にこの選手なら千切れないでしょう」という選手が離れてしまう。注目が集まるのは当然です。まさに『輪界最速』。その強さが脇本選手の魅力であると同時に、後ろの選手にとっては恐怖ですよね。

 

脇本 連係するのにね、嫌がられる(笑い)。ふふふ。古性ぐらいよね、「やったー」って連係を喜ぶのは(笑い)。

 

古性 ダッシュで離れるとかのレベルじゃない。みんな途中から脇本さんに離れていく。そういう離れ方をするっていうのは、今までにないんじゃないですかね。

 

ライン3人、お互いの意志が伝わった。納得がいく一走だった。(脇本)

 

――脇本選手が印象に残ったレースはありますか?

 

脇本 印象に残るレースっていうよりかは、僕自身、今年はG1の決勝でそこそこ先行する機会があったんですけど。その中でも宮杯の決勝での先行に関しては、ライン3人(※)でお互いがお互いの気持ちをわかり合った上でやった「突っ張り先行」だった。そういう風に3人、お互いの意志が伝わるようなレースが出来たっていうのは、古性君と連係したレースの中でも僕的には納得がいく一走だったな、と思います。

 

(※)高松宮記念杯(6月岸和田) 決勝戦

 近畿勢は脇本雄太-古性優作-稲川翔で3人ライン。レースは前受けの脇本が新山響平を突っ張って先行。最終ホームは脇本-古性-稲川の後位に松浦悠士-山田庸平、新山-佐藤慎太郎、松井宏佑-郡司浩平の一本棒。

迎えた最終バック、松浦が良いスピードで捲り上げるも古性がブロック。脇本を援護し、2センターでタテに踏んだ古性が抜け出して優勝して大会連覇。イン強襲の佐藤が2着、3着は稲川。

 

――その脇本選手の突っ張り先行ですが、後ろから古性選手は何か感じるものはありましたか?

 

古性 僕は宮杯を走る前からグランプリが決まっていましたし、脇本さんもその時点ではグランプリ出場圏内にいて、稲川さんがまだ圏内には位置していなかった。だからこそ、脇本さんも僕も、稲川さんにチャンスがある走りをしたいとは思っていましたね。

 

脇本 そういう意志的なものというか。もちろん僕も、逃げ切れるんだったら逃げ切りたいと思っているし、古性君も番手から抜ける態勢をしっかりとって、お互いが勝負した上でラインで決まる一番の策は何だろうっていう。別に走る前に相談をしたわけじゃないんですよ。だけど、お互いの意志が上手く噛み合ったレースだったな、って。

 

脇本さんが好き。僕の片思いかも。(古性)

 

――連係実績を重ねていくにつれて、お二人の関係性に変化ってありますか?

 

脇本 変わってないよね。

 

古性 変わってないですね。

 

――やっと本音で語り合えてきたり…だとか。そういうのはありませんか?

 

脇本 常に本音だよね。

 

古性 常に本音。お互いに隠すこともないし、正直、仲が良いと思っている。僕、個人は。僕だけかも(笑い)。

 

脇本 やめてよ、そんな俺に裏があるみたいな言い方(笑い)。

 

古性 いやいやいや、僕の片思いかも(笑い)。好きやから。

 

脇本 片思い?そんなことはない。

 

古性 そうやって脇本さんのことは人としても好きやし、思うことがあったらお互いに言っていますね。

 

脇本 言い合っているし、同じ開催の時に必ず夜に部屋に行って話をするぐらいだもんね。

 

古性 だから仲は良いと思うんですけどね(笑顔)。

 

――どういった話をされるんですか?

 

脇本 近畿地区のメンツの状況とか、どうやったら地区全体として上手くいくんやろうな~っていう。そういう全体的な現状報告みたいな話をお互いするし、今の調子とかの話もコーヒーを飲みながら、ゆっく~りね。

 

互いが互いに高め合い、近畿地区全体を引っ張る二人

 

――お二人は初連係を覚えていますか?

 

古性 岸和田かな?いや、静岡?

 

脇本 俺は静岡やと思う、最終日。

 

古性 あ~、あれが初っすね。

 

脇本 静岡ダービーの最終日じゃない? 4人で連係したやつ。(※)

 

古性 そうですね、それやな。

 

脇本 その頃は(連係の)ちぐはぐ感が半端なかったけどな(笑い)。

 

古性 えっ?

 

脇本 俺を迎え入れようとして古性が空けてくれていたのに、俺は入らずに前に突っ込んで行ってさ(笑い)。

 

(※)脇本と古性の初連係

 2016年5月5日 第70回 日本選手権競輪(静岡)最終日 7R S級特選

 近畿ラインは脇本-古性-澤田義和-椎木尾拓哉の4車ライン。脇本と吉澤純平が打鐘前から激しくモガき合う。

叩きに来た脇本を吉澤が内から突っ張ると、飯嶋則之が吉澤と連係を外す。飯嶋は追い上げを見せるが、絡んだ古性に捌かれて後退。そのまま脇本が吉澤の番手から捲り上げて首位。

古性は脇本に続けず3着。当時、古性は「こういう(脇本の番手を回る)チャンスが来たときにしっかり生かせないとダメ。そのために頑張っているので」と悔しさを口にした。

 

気になるグランプリの並びの前後は…

 

――さて。正式な発表は前夜祭(19日)になりますが、お二人の並びが気になるところですね。

 

古性脇本 ふふふ(笑い)。

 

脇本 もういいやろ、俺が前で(笑い)。

 

――投げやりですか?(笑い)。確かに大方の予想は脇本選手が前なるとは見ていますが。

 

脇本 何か要点があるとしたら、僕が明らかに調子が悪いとか。そういう場合は僕の方から言っています。

 

――お互いに持ち味が生きるのは、脇本選手が前、古性選手が後ろ。これが自然な流れではありますよね。

 

脇本 そうですね。例えばですけど、明らかに僕が不利なメンバー構成になったら、僕が後ろになった方が良いねってなる時もある。少なくともお互いが勝てる、ライン決着ができるような最善の方法をその時、その時で取るっていうだけです。だから、古性君だけを勝たせるためのレースはしない。お互いにラインで決められるように、自分が勝つためのレースをっていう意識ですね。

 

グランプリに向けて岸和田で直前合宿を開催。並びはどうなる?

 

――今年のグランプリ出場選手を見て、特に警戒すべきラインや選手はいますか?

 

脇本 僕は新山ですね。新山がいつも通りの前を取って、どこのラインも出させないようなレースをするのかな、って。

 

古性 僕は特にはいないですね。脇本さんが先行態勢に入った時に、自分がどういう仕事ができるかが大事僕らは2車なので、(外に)持っていたときに内に来る選手をイメージはしているし、その対処をしっかりしないといけない、そういう展開になったときには。だけど、レースになってみないと分からないですね、みんな強い選手ばかりなので。

 

脇本 主導権を取るまでが僕の仕事。だから、そこから先は古性君に任せて。お互いにやれることはこうっていう、ラインの役割を果たしたいですね。

 

近畿地区のこれから、自分の立ち位置。村上義弘氏の存在。

 

――今回の合宿には若手から近畿のトップ選手まで、多くの選手が集まりました。合宿の目的は?若手選手の育成に重きを置いているのでしょうか?

 

脇本 僕らは普通に練習してグランプリ前の調整を含めた合宿で、若い選手にも刺激を受けてほしいなっていう思いはありますね。

 

――近畿地区において、自分たちの立ち位置や役割をどのように捉えていますか?

 

脇本 中堅(笑い)。年齢的に言えば。

 

古性 中堅ですね~。でも、やることも中堅ですよね。

 

脇本 そうね、中堅なイメージ。

 

――村上義弘さんが引退され、今後の近畿を脇本選手、古性選手が引っ張っていくにあたって感じていることはありますか?

 

古性 村上さんは隠れて競輪場に来ている(笑い)。

 

脇本 この間もいたしね、2日前に(笑い)。そういった意味で、村上さんは影でしっかりと競輪界を見守っているし、村上さんの立ち位置は変わっていない。長老」的な、って言い方は失礼ですけど(笑い)。

 

古性 うん、ずっとおる気がしますね。

 

脇本 影で村上さんだったらどうするんやろう、どうやって指導しているんやろうって。そうやって思っている以上、引退はされているけど、常に村上さんがいるような気がする。

 

――そう感じるのはお二人が『村上イズム』を継承されているからですね。

 

脇本 僕と古性、お互いにベクトルは違いますけど。先頭を回るときと、番手に回ったときの立ち位置はそれぞれ異なるので。二人合わせて村上さんで行こう(笑い)。

 

古性脇本 あはははは(爆笑)。

 

脇本 僕ら合わせて、やっと村上さん一人分(笑い)。

 

――そう考えると村上義弘さんの偉大さといったら…。

 

古性 (場の雰囲気が)ピリッとしますもんね。

 

脇本 ピリッとするね~。その場にいるだけでするもんね。

 

――報道陣もピリッとするそうです。

 

脇本 記者は直立不動で待機していないとダメですよ(笑い)。

 

――今後、近畿地区がどうなっていって欲しいですか?

 

脇本 もう少し自分たちに影響されてほしいというか、自力だったら僕みたいに、自在なら古性君を目標にするとか。せめて、僕ら二人がしっかり上に立っている以上は、そこを見て育っていってほしいな、とは思います。

 

――あまりガッツやハングリーさが感じられないと?

 

古性 それは感じますね。

 

脇本 全然(ない)。今日のトレーニングに関しても、僕が感じる不満もあったので、このあと伝えようとは思いますけど(苦笑い)。

 

だってさ、マディソン(練習メニュー)を先に若手がやったじゃん。そのあと先輩たちがやって、その間30分もあるのに「次は何やりますか?」とかさ、次にやることを誰も聞きに来なかった。なんなら、僕らよりも上の人間しかバンクにいなかったしね。修二さんや翔さんとか。

 

そういうところですよね。脚力的なものじゃなくて、精神的、意識的のところをもうちょっと考えてほしいな、って。強くなるためにはとても大事な要素だと思っているので。

 

後輩の育成にも熱が入る脇本

 

二人に聞く『強い選手』とは。「タイトルを3つ獲ってこそ本物」(脇本)

脇本の練習用フレームに刻まれる「最速最強」の文字

 

――お二人が思う「強い選手像、強さの定義」があれば教えてください。

 

脇本 どんな時でも1着を取りに来る。どんな展開、どんな場面でも。たとえ単騎であろうと、ラインができようが。常に期待に沿うことができるっていうのが強い選手かな、と。

 

古性 強い精神力があって、勝っても負けてもお客さんが納得できるような走りができる選手。そういうのを積み重ねてこそ、選手は大きな舞台で活躍できるんだと思います。お客さんが納得できないレースで特別競輪を獲った選手は今までいないと思うし、僕がデビューしてからは見たことがないので。…そんなことはないか(笑い)。

 

脇本 あっははは、ノーコメントで(笑い)。

 

古性 特別をずっと獲り続けている選手は、そうやってお客さんは納得できるようなレースができる選手。単発やったら…。

 

脇本 単発やったら、マグレって捉える人もいるでしょう。

 

古性 タイトル、何個以上にしておきます?(笑い)

 

脇本 僕は「」だと思う。年間じゃないですよ(笑い)。自分が今までやってきた競輪人生の中で3つ獲ったら、常に格として上に見られるっていうか。

 

古性 1回じゃダメ。

 

脇本 単発だと、たまたまというか、流れの中でとか番手発進で獲りました、とかになるよね。

 

古性 そうっすね。

 

脇本 単発はそういうのがあるけど、3つ目以降は「本物」かなって僕は思う。

 

古性 確かにそうですね。3つは獲れないっすもんね。(他人事)

 

脇本 年間3つはやり過ぎやって!

 

古性脇本 あはははは(笑い)。

 

――来年の特別競輪は、近畿ゴールデンコンビで総ナメも夢じゃないですよ。

 

古性 脇本さんに獲ってもらいます、グランプリを含めて年間7こ!(笑い)。

 

脇本 やり過ぎやろ!でも、常にお互いがG1の決勝を走るのが当たり前ような感じになるのが「一流の証」だと僕は思っている。

 

古性 なんかあの~、特別競輪の前になると、よく昔のダイジェストが放送されるじゃないですか。ああいう感じで僕らが出てくるぐらいの感じが良いですよね。

 

――「この選手、また出てきたよ~」みたいな感じでしょうか?

 

脇本 そうそうそう。「吉岡さん、神山さん、またいるわ~。ずっといるじゃん」みたいな(笑い)。常に決勝に乗っている、強いなっていう認識になると思う。たまたま出て、たまたま獲りましたっていうのは印象に残らない。年数が経ったら、忘れられてしまうでしょう。「獲ったのって誰だっけ?」ってなっちゃう。だけど、タイトルを獲った数が多ければ多いほど、その印象ってずっと消えないと思う。そういう存在でありたいですね。

 

脇本 実際、古性なんか今年は1回しか外していないし、ずっと乗ってたじゃん。

 

古性 ん?

 

脇本 今年のG1の決勝の話。外したのは競輪祭だけでしょう?

 

古性 あ、そうっすね。

 

――脇本さんも落車したオールスターと欠場した親王牌以外は決勝に乗りましたよね。

 

脇本 うん。

 

古性 競輪祭、よう乗ったっすね~!

 

脇本 意地!(笑い)。

 

 

〈プロフィール〉

脇本 雄太(福井・94期) 年間獲得賞金9,034万7,700円 賞金ランク8位

グランプリ出場回数 4回(2018、19、20、22)

 

古性 優作(大阪・100期) 獲得賞金2億2,307万6,500

グランプリ出場回数 2回(2021、22) 

今年度 特別競輪優勝3回 

第38回 読売新聞車杯全日本選抜競輪(G1・高知)

第74回 高松宮記念杯競輪(G1・岸和田)

第32回 寬仁親王牌・世界選手権記念トーナメント(G1・弥彦)