グレードレース

競輪放浪記《第5回》プロ雀士・滝沢和典(アオケイ紙面掲載コラム)

2022/12/28

2005年、作家の白川道さんと中瀬ゆかりさんに連れられて平塚競輪場に足を運んだ。 その日は私にとって初のグランプリ現地観戦だった。白川さんは金も名前も何にもない私を何故だか可愛がってくれていた。無鉄砲で計画性が無い、いい加減な若者を自分の若い頃を思い出すような気持ちで面白がってくれていたのだと思う。  

KEIRINグランプリ2005は加藤慎平選手が優勝となり、3連単は145,740円の高配当。私の素人車券が当たることはなかったが、迫力満点のレースを見た後の何とも言えない余韻と電車賃ギリギリ程度の金が残っていた。通路を進み、落車直後の佐藤慎太郎選手に白川さんが「おー大丈夫かー?」と声をかけると「大丈夫です、前が詰まっちゃって...コケちゃいました。すみません!」と肩で息をしながらも元気良く、笑いながら返事が返ってきた。  

平塚が地元の白川さんが案内してくれた居酒屋へ行って一杯。金は無いが、いつもより酒が美味く感じた。しばらく飲んだ後、私がトイレに入った瞬間白川さんがデカい声で  

「あー!ションベン流すの忘れた、ターキー今日はとことんツイてねえなー」と大笑い。いやこれに関してはあなたのせいじゃないですか、と思いつつ私も一人で笑いながら用を足した。席に戻ると、岡部芳幸選手、高木隆弘選手がやってきた。岡部選手の有名な競輪選手やミスター(長嶋茂雄)のモノマネで大笑いして、高木選手はひたすら優しく穏やかだった。  

白川さんや中瀬さんと過ごす時間はいつも笑いが絶えないし、選手の皆さんはエネルギーがあって面白く、キラキラ輝いている。そんな方々と一日中過ごせば競輪ファンの一丁上がりだ。その日「下手の横好き麻雀プロ車券師」が誕生したのである。  

さて、今回のグランプリは北が4車結束、二人合わせて4冠の近畿コンビ、強力な単騎勢が3車となった。直近のグランプリ連続優勝で縁起の良い4番車は守澤選手か、そういえば2005覇者の加藤慎平さんも4番車だったな。 

皆さんはどんな物語を描いているだろうか。間もなくKEIRINグランプリ2022の優勝者が決まる。  

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編集部

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