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【奈良競輪 開設74周年記念春日賞争覇戦GⅢ】鈴木庸之は選手生命の瀬戸際に「今さら悔いはない」

2025/02/07

奈良競輪の「春日賞争奪戦(GIII)」が8日に開幕する。2Rの一次予選に出走する鈴木庸之に話を聞いた。

不撓不屈の男が選手生命の瀬戸際に立たされている。長年抱えている腰椎ヘルニアは一進一退を繰り返し、限界を迎えていた。鈴木は言う。

 

「昨年の秋に腰を手術。今までの無理が重なって返ってきたのかな。痛みはなくなったけど、麻痺が残っていて左脚に力が入らない。左だけ、おじいちゃんみたいな。手術をして劇的に良くなる人もいれば、そうでない人もいる。もう3ヶ月ぐらい経っても、わずかな兆ししかないし、あまり期待はしていない」

 

出走本数の関係で来期はA級陥落が決定的で「A級で走れるかも分からない。できるところまでやりきるか、スパッと辞めるか。今期を走ってみて、あとは家族とも相談しないといけないですけど」と胸中を吐露。

 

「こんな状態でも『頑張れよ』って声をかけてくれる人がいる。だけど、そういう人たちの気持ちに応えることができないのは嫌だし。ここまでやってこられたのは家族のおかげだけど、強くなれたのはお客さんのおかげですから」と、そこには大きな葛藤があった。

 

 早かれ遅かれ、選手人生にピリオドを打つ時がいずれは来る。鈴木自身もそれは理解している。

 

「その時、その時、見たい景色のためにやってきた。“これで終わりかもしれない”、そう思ってやってきたから。今さら悔いはないんですよ」

 

そうやって、さらっと言ってのける鈴木は選手としても人間としても格好いいなと思った。簡単に頑張れとは言えないが、鈴木なら、また逆境を乗り越えてくれると信じたい。

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